2022年05月
2022年05月31日
◆第21週(5月23日(月)~5月29日(日))
実質的な意味で5月最後の週は信州出張から始まった。6月に株主総会が開催されるため、今後の株式対策や資本政策、あるいは今期業績の再検討などを行うことになる。
新型コロナウイルス感染症による大きな影響を受けている飲食店だけに、今後の来店数も最盛期の70~90%(8割経済とも言われる)とみられ、さらに、小麦粉などの食材原価が大幅な高騰傾向にあるだけに、損益構造の見直しも要求されている。少なくとも値上げは前提条件だが、まだ序の口である。
現在の小麦価格は北米の不作が原因で高値になっていたため、円安やロシアのウクライナ侵攻による影響ではない。したがって、10月以降にさらなる食材原価の値上げが予定されるため、企業としても10月以降に次の値上げを検討せざるを得ないだろう。トータルで20~25%アップは考えておく必要がある。つまり、10円単位の値上げでは済まないということだ。現実に、半年ごとに改定する輸入小麦の「政府売り渡し価格」は、4月に17.3%アップして過去2番目の高水準になっている。仕入価格も前年の3,716円(25k)から4,031円、4,401円と短期間で18.4%も上がっているのだ。
そのために、今後は店舗だけでなく工場のムーンショットも検討していかなければならない。小売店やスーパーへの展開というより「食」を通じて日本の社会と未来に何が提供できるのかを考えるのがムーンショットだ。
たとえば、日清食品は「完全栄養食」を開発して、病院や介護施設などへの提供を始めている。「未病対策先進国」の入口に「食」があると開発を始めて20年。まさに、ムーンショットを打ち出していたのだ。目先を考えるのではなく、未来の社会の中にある自社を考えるというのは老舗企業の常道でもある。
24日の朝、北アルプスの焼岳で火山性地震が増加している報道があった。ホテルの窓から見える諏訪湖遠方の北アルプスも動き出しているらしい。
今週後半は2社の株主総会に出席する。1社は株主側として、もう1社は会社側(監査役)での出席だ。ただ、出席しているのはそれぞれの企業の1年の業績をしっかり把握し直して、どこに課題があったのか、来期はその課題にどのように対応していくべきなのかに関して意見を言うためと言っても過言ではない。いずれも、日本の未来に欠かせない企業だけに、社会への浸透度(ひいては、顧客創造)をどのように広げていくか、さらには社内における人材教育の強化や幹部育成に関するポイントを整理するために出席している。
5月15日には63冊目の出版となった「京都 老舗物語」を発刊した。関係者に贈呈したが、今週になって多くの方からお礼状や内容の感想などが届き出している。良く読み込まれた経営者からの文章は大変有難い。嬉しい限りである。
2022年05月26日
◆第20週(5月16日(月)~5月22日(日))
考えてみれば、出張はだいたい月曜日からスタートしている。予定が立てやすいからだろう。今週も16日(月)から18日(水)まで京都・大阪へ出かける。
16,17日は、顧客企業の定期的訪問だが、最近はほとんどが幹部研修を行っている。コロナ禍でもあるため、この機会に先行投資的に社員研修を行い、幹部人材の強化を図っているからだ。
17日の夜は、京都四条鴨川沿いの老舗飲食店を訪問する。2年ぶりに予定している京都老舗体感ゼミナール®の訪問候補先企業である。5代目となる社長とも面談し、今年の老舗ゼミ初っ端の訪問先として承諾を得た。
18日は、大阪の宝塚・伊丹の企業を初めて訪問する。京都から大阪に向かう東海道線(京都線)が朝から踏切事故で遅れて京都駅で待たされてしまった。久しぶりに超満員の東海道線新快速で大阪に向かい、宝塚線に乗り換える。京都駅からは約1時間だった。
目的は、「会社物語」の制作依頼である。初代の社長や現在の三代目社長とのインタビューを行った。昼食を含めて約4時間を要す。「会社物語」は明確な目的があり、商品力、技術力、サービス力も高く、社会的な存在価値がありながら、地域社会にまだ浸透していない良質な中小企業を支援するための小冊子である。
中小企業に必要なのは、自社に合った顧客、自社に合った社員、自社に合った資金である。顧客、人材、資金を得るためには社会に自社の存在をしっかり認知させる必要があるのだ。「会社物語」の制作業務はコンサルティングである。
19日(木)は顧客企業の新分野開拓の講座で、今回が8回目。とりあえず、月1回、1年は続けていく。20日(金)はやはり顧客企業の幹部、役員会への出席。次の株主総会で発表する財務面での報告の仕方を、ポイントを絞り込んで行うために、考え方と方法論を提示した。数値の背景を見せることで、企業の考え方がわかるような報告が望ましい。
今週は「七十二候」では「竹筆生(たけのこしょうず)」である。筍が土を持ち上げ顔を見せる頃だ、というわけである。20日の夜に帰宅すると、夕食のメニューは筍ご飯だった。1年を72の季節に分けて、3~4文字で表現している七十二候を考えた人はすごい。1年を72に分類すると、要するに5日ごとの季節になる。だからわかりやすいのだ。
考えることはモノゴトをできるだけ詳細に分解することが第一義である。分解した小単位から考えればわかりやすくなるのだと何年も話してきたが、平安時代から季節を5日単位にしている「七十二候」の存在は素晴らしい。
コーヒーに小さき草餅 旅仕舞い
哲
哲ちゃんの週刊業務日誌⑲ |
◆第19週(5月9日(月)~5月15日(日))
雨の多い1週間となる。9日(月)の午後に久し振りに上野の東京美術館で「墨美展」を見学。友人が出品しているので出かけることにした。プロもアマも一緒に出品されているが、友人にこんな才能があるとは全く知らなかった。
今週は50年前に起きた大きな事件・事故の日が続く。実は50年前と言うと3月23日に東京に出てきた年である。まだ東京に馴染めなかった5月の連休の後から新しい仕事を与えられた。張り切っていた時に大阪ミナミの千日デパートビル火災が発生した。13日である。関西では有名で何度か行っていただけに、118人が亡くなったと知って驚き以外の言葉がなかったことを思い出した。
未だに日本のビル火災史上最悪の惨事と言われている。これによって消防法令や建築基準法が大改正されている。防火訓練が義務付けられたり、スプリンクラーや火災報知機の設置範囲が一気に広がったのだ。
その2日後の15日に、沖縄の本土復帰の調印式が行われた。それ以前は沖縄県代表が甲子園の土地を沖縄に持ち帰ることは禁止されていたので、帰りの海に捨てていたことを覚えている。1972年5月15日からドルではなく円が使用され、その数日後から車の右側通行が左側通行となったのだが、沖縄の本土復帰は沖縄の人々にとってどんな幸いをもたらしたのだろうか。
沖縄にはコンサルティングの仕事で数回、講演などで6回ほど訪問している。仕事で行った際、観光も含めて多くの人達と話す機会を得てきた。10年ほど前から、沖縄は井上ひさしのキリキリ国のように独立国になれば、日本のほとんどの国民は沖縄の存在価値の大きさにびっくりするのではないかと言い続けている。エンターテイメントやプロスポーツで活躍している相当数は沖縄出身でもあるのだ。少しでも沖縄に対する思いを表すために、制度ができた翌年から沖縄県や名護市に「ふるさと納税」を行ってきた。「いちゃりばちょーでー」と「なんくるないさ」という方言に代表される沖縄の人々だからこそ、この50年間耐えてこられたのではないかと考えている。
調べて見ると、非正規職員率、高校中退率、母子世帯率などは全て日本で最も高く、一人当たり所得は最低で、相対的貧困率は30%(全国平均13%)である。50年の重みを日本人はどう考えているのかを考えざるを得ない日となった。
連休明けの今週は、前半が訪問、後半は来客の多い1週間となる。「蚯蚓出(みみずいずる)」と呼ばれる週だが、少しずつコロナウイルスとの共生をしながら、冬眠から抜け出していくことが必要になりだしている。
ちなみに、蚯蚓は大地の鍬と呼ばれているが、その理由は、食べた落ち葉が分解されて栄養素の高い土を生み出し、さらに、土の中を掘って移動しているため、水はけの良い畑を生む役割を果たしているようだ。蚯蚓に負けじと動き出そう。
幸せの尺度はどこに 蟇 哲
2022年05月13日
◆第18週(5月2日(月)~5月8日(日))
5月1日のTBSで、お客様の飲食チェーン店が取り上げられていた。日曜の20時だっただけに反響も大きかったようだ。放送直後、専務に「数千万円の価値がある」とメールをしたが、放送終了後の15分間で通販の注文が殺到したらしい。TVの凄さは誰がガイドかによって異なる。「インフルエンサーが誰か」は商品力や技術力が備わっている企業にとっては重要なポイントと言えるだろう。
元サッカー日本代表監督のオシム氏の訃報にも接する。オシムと言うと、日本サッカーに「考える」を導入し、レベルアップに努めた監督だ。考えて走れ、考えながら走れ、といった意味で、サッカーは「走る競技ではなく何の為に走るのかを考えて走るスポーツだ」とわかりやすく話していた人だ。
オシム語録は有名だったので数多くをメモしているが、「ライオンに追われた野ウサギが肉離れをするか」というフレーズは、いろんなケースで使っていた。要するに、事前の準備不足が怪我を招いたり結果に影響することをわかりやすく一言で語っているのだが、それより、プロだったら全て命懸けでやるという意識が当時の日本サッカーに感じられなかったということなのでだろう。日本サッカーというより日本社会に対して重要な人材だったと考えている。
今週はゴールデンウィーク。出勤は2日(月)と6日(金)の2日間。社会人力養成講座と京都老舗体感ゼミナール®のパンフ作成のためのカリキュラム調整や訪問先企業との交渉などを行う。また、会社物語の作成依頼を受けている大阪のベンチャー企業の下調べやインタビュー方法などを構想することとなった。
食事に出掛けた際、神田川に毎年恒例となっている数百の鯉のぼりの群れを見つけた。タイミングよく薫風の中に数百匹が泳いで壮観である。5月の到来だ。
5月3日(火)は憲法記念日。今年は憲法施行75周年である。1946年11月3日に公布され47年5月3日に施行されたからだ。日本国憲法のポイントは、一言で言うと「立憲主義」。「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義」が日本国憲法の基本原理と言える。企業で言うとパーパス(目的)であり、個人で言うと存在価値と言ってもよいだろう。こうありたいという未来から現在を考えるバックキャスティング思考であり、その目的を実現するためにやるべきことを考えて実行するという姿勢が重要なのだ。ムーンショットの中に戦争はない。
5月5日の子どもの日に発表された15歳未満の男女は前年より25万人減少して1,465万人だったらしい。41年連続減少で過去最少である。1954年のピーク時は2,989万人だからまさに半減で、総人口の11.7%にまで落ち込んでいる。65歳以上人口が29%を超えているので、高齢者の1/3しかいないという大変な事態を迎えているのだが、何の策もないのが日本の現実なの。未来から考えるためには、子どもの人口は重要な課題である。
2022年05月02日
◆第17週(4月25日(月)~5月1日(日))
相続税の財産評価基本通達6項の適用に対して納税者敗訴という最高裁判決が様々な業界に影響を与えているらしい。影響度が強いということは、納税者側の立場にいたからということだろう。
不動産相続に関する講演は30年以上前からすでに数百回以上行ってきた。相続発生直前の対策や事業性のない不動産対策などは、不動産相続対策の本質から逸脱しているという話を口を酸っぱくして話してきた。節税を目的としての行為は、国の考え方次第でいつでもひっくり返るということだ。何らかの明確な目的を達成する際に、同時に考えることが節税の最前線である。
相続税を無くすために収益不動産を購入するのではなく、今後の事業活動に必要な収益力のある不動産を購入することで、節税メリットも同時に受けるというのが、節税行為の限界なのだ。
今回の事案は、不動産の所有期間など、どう考えても相続税を減らす(どころか0だったらしい)ための行為以外に見当たらない。当然の判決だと思っていたため意識の範疇になかったが、この数日間にこの件に関する意見を問われることが多く、また、税務業界だけでなく不動産業界や金融業界にも波紋を及ぼすという。基本通達にある「評価が著しく不適当なら国税庁長官が評価するぞ」という伝家の宝刀が抜かれたに過ぎない話である。そもそも、話題になることが問題なのだ。
今週は、25日(月)は不動産の収益物件購入計画中の顧客経営者らに同行し、2つの物件の現地調査から始まった。物件や立地調査は、店舗展開や不動産活用などで何百回も検証してきただけに、現地を見ればポイントがどこにあるかはだいたい理解できる。現地周辺なども調査し、その後、カフェで解説することとした。
26日(火)は、午前中はセンサー技術の開発をされている経営者が来社。今後は医療系の測定装置として市場に出回りそうである。午後は久しぶりに40年以上付き合いのある弁護士事務所を訪問。顧客の依頼による相談である。そのため、28日(木)には他の法律事務所とも打ち合わせて、顧客に選んでもらうこととした。
今週は『京都 老舗物語』のゲラ原稿が戻って来たので、27日(水)に対応。連休明けには出版できそうである。同時に、今年10月に予定している京都老舗体感ゼミナール®の候補会社を打診する。
週末からゴールデンウィークに突入した。天候が不順だっただけに、野球やソフトボールの練習試合の前のグランド整備に時間がかかる。最近はグランド整備が板に付いてきた気がする。
現代は VUCA(ブーカ)の時代よ 日脚伸ぶ 哲